「……また明日、ね」


だから今日は終わり、とか……何言っちゃってんの私。何想像しちゃってんの私! 明日は振替休日だよ!


うぐう、と顔を赤く染める私に柊くんはちょっとだけ目を見張って、すぐに頬をほころばせた。


「そうだね。まあ俺は、したいときにするけどね」


マシュマロに下唇を挟まれたとでも思っておこう。


「イッテ!」

「学校閉まっちゃうじゃん! もうっ!」


自分の机から鞄を引っ掴んで、そのまま教室のドアへ向かう。


「待ってひまり。置いてくなよ。ひまちゃ~ん」

「お姉ちゃん思い出すからその呼び方やめてっ」


振り返れば、手を差し出す柊くん。


ああ……もう、本当に。


「手、繋ぎませんか」


さっきまで余裕たっぷりだったくせに、どうしてそこで照れくさそうにするの。


ずるい。私だってもっと驚かせたり喜ばせてみたいのに。


だけど、繋ぎませんかって。照れくさそうにしながらも望んでくれるのは、私に対してで。叶えてあげられるのは私だけなんだと思えば、目の前の彼が愛しくて仕方なくなる。


「……繋ぎたいんですけど」


待ってるんだけど、とも言いたげに空中で止まったままの手を揺らす柊くん。


私はにやけそうになりながら、その手を迎えに行く。


はじめてデートした帰りの日以来だ。

あのときは、もし気持ちまで流れ込んでしまうなら手を繋げないなと思ったけれど、今は本当に流れ込んでしまっても構わない。


だってもう伝えたから。好きな人の彼女になれたから。


……この人、私の、彼氏。


ぎゅっと柊くんの手を握りしめたあと、顔を見合わせてから微笑み合った。


不安がないと言ったら嘘になる。


でも今はこの幸せを噛み締めていたいから。


どうぞこれから、よろしくお願いします。