柊くんは私のことが好きらしい



時間の勝負だ。怖気づくな。この一瞬1秒が勝敗を分ける。ひるむな。前進あるのみ。

さあ行くんだ、ひまり!!


「うわっ、びっ……くりしたー」


差し出すのに夢中で名前を呼ぶの忘れた!


そりゃ急に背後からずいっと得体のしれない袋が現れたらびっくりするわ! ごめんなさい!


「はは。どうしたの、ひまり」


出たばかりの廊下で立ち止まって、柊くんは私が差し出したカップケーキを見遣る。


今終わったばかりの家庭科の時間に作ったカップケーキ。横居さんがばっちりラッピングをしていたように、私だって準備だけは万端だった。


先手必勝かの如く、柊くんが席を立った瞬間追いかけて、無言で差し出しちゃったのは猛省してる。


べつにあとでもよかったんだけど……1回くらい、誰よりも先に渡してみたかった。


「くれるの?」

「……うん。私の班は、チョコマドレーヌだから」

「ああ。だからチョコの匂いしてたのか……っていうか今日の実習、普通のマドレーヌだよね?」

「勝手に自分のだけ作り変えたんだよ。材料持参で。しかも超スパルタ。咲も食べたいなんて言わなきゃよかった」


スパルタは余計だ! 


「ふはっ。マジで? そういえば、ひまりのバイト先ってケーキ屋だっけ」

「うん、そう……」

「やっぱお菓子作るの好きなんだなー」


そんなことより早く受け取ってもらわないと! 横居さんに体当たりで邪魔される予感しかしいない!