「――あれ? ひまりじゃん。どうしたー」
体育館への渡り廊下を進んでいる途中、部室棟のほうから横切ってきたのはバスケ部の人たちだった。ぞろぞろと校庭へ向かう人たちの中でふっくんは立ち止まり、私が歩み寄るのを待ってくれた。
「ふっくん……! あの、もう部活始まるっ?」
「んーん。まだ。ストレッチしたあとランニングだから、準備できた奴から集まってるだけー」
「そっか……」
さっきの集団に柊くんはいなかった。もう校庭に行っちゃったかな。
「メグに用か?」
「ぶわああ! ビビったぁあああ!」
飛び退いたふっくんの隣に現れたのは小鷹くん。……ってことは、
「メグならまだ部室に」
部室棟へ目をやった私はほっと息をついた。
「めずらしーな。小鷹があと何分って言わないとか」
「読めないんだよ。のろのろ着替えて、乗り気じゃないみたいだから置いてきた」
「ふーん? 体調でも悪いのかね。まあ金曜から機嫌はよくないもんなーっ」
あっはは、と笑ってからハッとするふっくんは、薄目になった小鷹くんから目を逸らす。今小さくごめんなさいと言ったような……。
ため息をついた小鷹くんに視線をよこされ、ぴくりと身体が反応する。
「気にしなくていい」
「あは……うん、大丈夫」
なんて、半分はウソ。気にならないはずがない。


