柊くんは私のことが好きらしい


「恥ずかしいから、あげられない」

「ええ? なんで~? 恥ずかしくないよ。あの高遠ちゃんかわいかったじゃーん」


心のもやもやは消えない。綺麗なものに対する憧れも、妬ましさも、抱えたままだけど。


私を助けようとしてくれる想いや、好きだと言ってくれた想いのほうが、何百倍も大事。


大事にしたいから、息をするように嘘をつかれたって、悲しくなんかなってやらない。


あの私がかわいい、なんて。


「思ってもないこと、言わなくていいのに」


横居さんの笑顔が引きつったのと、咲が吹き出したのはほぼ同時だった。きっと横居さんが話しかけてきたときから堪えていたんだと思う。


「そんなに笑うところかなあ……」


笑いすぎて、みっちゃんとマイマイが楽し気に近寄ってきてるんだけど。


「だって、やばい……っ普通ド直球でそんな風に返さないし! そりゃ返す言葉もないわ!」


それって本当にかわいく見えないってことじゃん。いいけど、せめてブサイクではないってフォローしてよ。


「何なに? おもしろいこと~?」

「ひまりがやばい! かわいいって言われて、思ってもないこと言わなくていいとか! 謙遜じゃないマジ返し……っだから好き!」

「えーっ! なんで、ひまりんかわいいじゃんか! あたしが言ったこと信じてないの!?」

「えっ!? いやそれとはまた違うっていうか……もう、咲! ややこしくしないでっ」