柊くんは私のことが好きらしい


スマイル0円ってほんとだなあ……私にとって横居さんの笑顔はむしろマイナス。借金した気分。


これって牽制されてるんだろうけど、正直それどころじゃない。


「あの、私、今ちょっと……」


目を向けた先で、柊くんはスポーツバッグを肩にかけていた。その姿も横居さん本人が遮ってくるから、今日は諦めるしかなさそうだ。


いったいなんだっていうんだろう。


目を合わせた私から諦めを感じ取ったのか、横居さんは微笑を浮かべる。


「この前の続きなんだけどさ。どーしても、いや? 1枚でいいの! メグが写ってるの欲しいんだよ~! 貴重だし! ……だめ?」


両手を合わせてお願いしてくる横居さんを見つめながら、綺麗だなと思う。


自然にカールしたまつ毛は大きな瞳を強調させていて、パールの入ったチークやパウダーはツヤを生んで、毛先を巻いたロングヘアは私があと2年は伸ばさないと得られない。


私が横居さんと並んだら、確実に見劣りする。

あのプリクラだって、写っているのが私じゃなくて横居さんだったら、笑われたりしない。お似合いだってみんな口にする。


……それが何?って思わなくちゃ。


言えなくても思わなければ、私はここから抜け出せない。踏み出せない。柊くんを追いかけるための、一歩を。


「ね、高遠ちゃん。いいでしょ? お願いっ」


八の字になった眉の下で上目を遣われ、頷きそうになった顔を左右に振った。