「べつに話しかけるのはいいと思うけど、何を話すわけ?」
わずかに間をあけ、咲は首をかしげた。
「だってひまり、彼女とか無理って言ったんでしょ。冗談だからもう1回考えさせてね~とか言うの? 鬼だな」
「言うわけがない!!」
びっくりしてつい大声を出してしまった。中庭には他の生徒もいるので、心なし声を潜める。
「そういうことじゃなくて……っこう、なんていうか、謝罪を」
「はああ? いらねー!」
「いや間違った! そうじゃなくてっ。なんであんなことを言ったのかっていう……謝罪を、」
ずんと肩を落とせば、謝りたくてしょうがないのはよくわかったと察してもらえた。
「けど、なんで無理って思ったのかはメグも知りたいだろーね。咲から言わせてもらえば、そんなことって感じだけど。散々聞かせられたし、散々フォローしたのに」
「うう……だってさぁ~」
「あーハイハイ。でもまあよかったんじゃない。保留にした原因がわかって」
「……うん」
それはよかった、とは心の底から言えない。でも受け入れたなら、あとは立ち向かうだけだ。簡単なことじゃないけど、何もしない自分でいるよりはずっとマシ。
「で? いつ話しかける気なの。言っとくけど横居のやつマジで調子のってるから。SPかってくらいだから。メグが話しかけてくるとも思えないし。どうすんの」
それが問題、なんだよねえ……。


