柊くんは私のことが好きらしい


「……何も聞いてこないから、知らないか、放ってくれてるんだと思ってた」

「そっくりそのまま返すわー。何も話してこないから、知られたくないか、放っておいてほしいのかと思ってたし」


中庭のベンチで話し込んでいた私たちは、ようやくお弁当に手をつけ始める。


「まあ、最終的に放ってくれてはないけどね」

「何? 横居がメグの膝に座ってるって焚きつけたことを言ってんの? それとも今聞き出したことを言ってんの? 咲的には褒められはしても怒られる覚えはない」


つんとすます咲には、怒るどころか申し訳なさを感じるくらいだ。


「ごめん、ありがとう。私、咲には助けてもらってばっかりだよね」

「べっつにー。咲は、言いたいこと言わないと気が済まないだけだし」


でも、それで救われたこと、いっぱいある。


きっと咲は私の知らないところでも、いろんな人に歯向かってくれているんだろうな。


だから私も、自分で立ち向かえるようにならなくちゃいけないって、思う。


今できることを、考えるべきだと思う。


「私が話し掛けたら……柊くん、嫌がるかな」


デートの事実を隠していた理由も知らなくて。先に目を逸らされて、直接ノートも返してもらえなくて。それなのに、泣きそうな私に気付いて、追いかけてきてくれて。


逃げてしまった私を柊くんは追及することもなければ、避けてるとさえ感じるのに。朝だけは真っすぐ、顔を合わせてくれた。


わけのわからないままでいるのは、いやだ。なんで?って思ったことを人づてに聞くのは、もっといや。