「咲も最初誰かと思ったし。いや、ひまりなのはわかるけど。ひまりじゃないっていうか……メイク?は、特に変わってないよね。肌か。下地が違うの? むしろ美容液? どっから見てもさらツヤだし……やっぱ髪型かな。オイル使った? アイロンしてるよね」
「女子って色々すげえなー」
「違いの判らない男子は引っ込んでろ」
「ひでえ言い草だな!! 俺にだって判るわ!」
……褒められてる。の、かな。
割と顔を合わせてすぐ、金曜日のことを突っ込まれる覚悟はしていたんだけど、そんな様子もない。
私のことでぎゃあぎゃあ言い合うふたりに、思わず髪を押さえる。
「へ、変じゃ、ない?」
「変じゃない!」
ぴたりと合った呼吸で言い切られ、恥ずかしさが膨らんだけど、逃げ出したい気持ちにはならなかった。
「ありがとう」
本当だ。メイクって、かわいくなるためだけにするものじゃないみたい。
「ねえ、どこの下地使ってんの? それとも化粧水の時点から違うの!? カーデの手触りもやばいんだけど!」
「……えっと、お姉ちゃんに聞いとくね。遊ばれたんだ、実は」
「お姉ちゃん何者だよ! 今すぐ聞いて、今すぐっ。気になって授業どころじゃない~っ」
早く、と急かすメイク好きの咲に笑いながら、携帯を取り出した。


