「お、おはよ……」
教室に入って一直線に咲のもとへ行けば、大きく目を見開かれたまま何も言われないから、うつむいた。
視線、視線、視線。痛いくらい突き刺さるものに負けそうになったとき。
「何事!?」
至極当然――と思いたくないけど、正しい反応を返された。
「ね、寝坊して……」
「寝坊!? たしかに咲が来たらいなかったけど、どのへんが寝坊よ!?」
咲は立ち上がって、私の腕を振り回しながら前に後ろと全身くまなく調べてくる。
うう……無言で見られるのも嫌だけど、突っ込まずにはいられない状態なのかと思うと恥ずかしくなってきた。
ひと通り見尽くしたのか、咲は「ふぅん」と意味ありげに呟き、再び椅子に腰かける。
「それでなんで、いつもより小綺麗になってんのよ」
それっていつもは小汚いってこと!?
「ヒイ!」
ショックを受けた私の顔を覗き込む、もうひとつの影に飛び上がる。
「おー! やっぱひまりじゃんっ」
訝しげな表情が笑顔になったことで、覗き込んできたのがふっくんだと気付く。誰かと思った、なんて言われるくらい、変わっただろうか。
「お、おはよう……っ」
「おっすー。てか何なに、髪おろしてるなんてめずらしーじゃん! すげえ久々に見た!」


