日常業務と、明日休むための準備と、誰が引き受けてくれてもなるべく分かりやすくできるように整理をして、1日の就業時間終了の時間を迎えた。
怒濤のような忙しさの後でよかったと思う。
そうでなければ、こんなところまで手が回らなかっただろうから。
「お先に失礼します。お疲れさまです」
まだ室内に残る残業組に声をかけて、ロッカールームに向かう。
就業時刻を過ぎた会社は経費削減のために冷房が落とされてしまっているけれど、居間くらいだとまだ名残があって涼しい。
あと数十分もしたらまた暑くなってしまうのだろうけれど。
着替えを終えた私は、会社の出入口とは逆方向にあるエレベーターに向かう。
登りボタンを押すと程なくしてエレベーターの到着を告げる音。
人は乗っておらずそのまま狭い箱へと乗り込むと、むわっとした暑さ。
それに耐えて5階まで行くと、エレベーターホールのすぐ脇にある非常階段を上って屋上へ。
開放的な空間は、冷房などあるわけなくて自然のままの熱を持ったまま。
つまりは暑いのだけれど、でも、時折吹く風がどことなく心地よく感じる。
ここは私の入社当時からのお気に入りで、仕事中に来ることは滅多にないものの、こうして仕事が終わると肩の力を抜きに来ることがしばしばあった。
泣きたくなるときも、疲れたときも、落ち着きたいときも、翌日の仕事に影響がでないようにここで気持ちをリセットしてから帰宅する。
見渡す限りビルや住宅の街、ベンチもなにもない殺風景な屋上は人が寄り付かず、心を落ち着かせるには最適の場所だった。



