世界が終わる音を聴いた


「そう言えばいつだったかもここでお誕生日おめでとーってしたよね」

同僚の言葉に、意識を今に引き戻される。

「今日はケーキなくてごめんね」
「気にしないし」
「あ、じゃあこれをあげよう」

ポイっと出されたのは板チョコで、思わず笑った。

「ありがと。てかなんで板チョコ?しかも口開いてるし」
「ごめんごめん!でも新品、許して」
「いや、別にいいけど」
「欲しかったのはシリアルコードなんだよぅ」
「なにか当たるの?」
「プレミアムライブ」
「……当たるといいね」
「望みは捨ててない!」

そう言えば、某ミュージシャンが好きだったっけね。
キラキラした眼差しで言うものだから、また笑った。
このあと彼女はいくらつぎ込むのだろうか、少し心配だ。
笑いながらご飯を食べて、もう間もなくお昼の時間が終わる。
可もなく不可もなく、慣れ親しんだ味のハッシュドビーフを食べ終えて、それを待っていてくれたようにみんな席をたつ。
じゃ、またね、と挨拶をして散り散りに自分の持ち場へと帰っていく。
私も同じように自分の業務を終わらせるべく仕事へ向かった。

室内は既に人が戻っていて、その中には学くんの姿もある。
つい目が行ってしまうことをもう否定はしない。
その代わり、未だもって報われることもないことも自覚している。
何で好きになっちゃったかな、と思うけれど、きっかけがあったわけでもなく気が付いたら好きだったのだから始末が悪い。
シキさんの言葉を借りるならば、それが恋と言うものだから仕方がない、だ。
ため息を漏らして席に戻った。