世界が終わる音を聴いた


お財布を持って食堂に向かうと、既にそこには数人の同僚たちがいた。
私の姿を目に止めてくれたようで、手を挙げている。

「ひとり?こっちくる?」
「ありがとう。買ってくるね」

私は返事を返して、食券機に向かった。
よし、今日はハッシュドビーフにしよう。
おばちゃんに食券を渡すと、すぐにトレーを埋められる。
食堂の大量調理、最大の利点なような気もする。

「はい、お待たせ!」
「ありがとうございます」

そんなに待ったわけでもないけれどそう言われたので、返事をすると、おばちゃんは、にこっと笑ってスピード感を緩めることなく次の人のトレーを次々埋めていく。
天晴れ。

埋められたトレーを持って、先程の席にいくと同期が4人、思い思いにしゃべっていた。
それぞれが違う部署に別れてしまっていても、同期というのは繋がりが深い。
おまけにこの会社はそんなに大きいわけでもなくて、話したことはなくともある程度は顔見知り、なんてことも少なくないのだ。

「久しぶりだね?」
「そんな感じはしないけどね」
「うちらはよく会うけどね」
「君たちはペアじゃん?」

他愛もない会話で実の無い会話。
それも楽しい。

「そう言えば芦原ちゃん、明日誕生日じゃない?」
「あ、そうじゃん。おめでとう!」
「おめでとうー」

ひとりが思い出してくれて、それが口火となってみんなが口々にお祝いをいってくれる。
そう言えば、2年前もこんな感じだったっけ。
ありがとう、と応えながら2年前のことを、すなわち、花守さんとお別れした日で学くんが好きだと気づかされたあの日のことを思い出した。