世界が終わる音を聴いた


テーブルにお茶を待っていくと、母と菜々美さんが座って談笑していた。
菜々美さんの前と、その横に空いた席へとお茶を置いて私も椅子に座ると、菜々美さんが優しい笑顔で「ありがとう」と言ってくれた。
些細なことでもお礼を言われるのは嬉しいものだ。
にこりと笑顔を返すと、仏壇に向かい合うその人を見た。

「なんか、らしいでしょう?」
「……ですねぇ」
「こんなにしてもらって。……菜々美さんにも、悪いわねぇ」
「そんな!全然。私こそ遠慮もなくお邪魔してしまって……」

自分が話題の種だと知ってか知らずか、学くんはヒナちゃんと会話を続けている。
その姿は5年前を思い起こさせた。
発覚した病気への向き合い方は本当に人それぞれだと思う。
自分の病気を知ったヒナちゃんが出した答えは、最良だったのかなんてことは分かるはずもないけれど、実にヒナちゃんらしい物だったと未だに思う。




夏が来る前の、じとじとした季節。
外は雨が降っていた。
検査入院からの結果が出た、次の日にお見舞いに来ていた学くんと話していたのを、たまたま聞いてしまった。

『胃癌、だったって。でもね、ごめんけど、別れてほしいなんて思ってないから。……絶対に負けないから、だから、一緒に闘ってください』

4人部屋の突き当たり、窓際。
はす向かいの人は、ちょうど検査か何かでそこにはおらず、他のベッドは空いたまま。
病室はがらんとしていたけれど、きっちりと閉められたカーテンで仕切られた空間にふたりきりでそこにいた。
カーテン越しだから話し声は聞こえてしまうし、内容が内容だけに入っていくこともしづらくて、私はそっと病室を出た。
泣き声も絶望もない、ふたりきりの空間を背に。
その時の私は純粋にふたりの幸せをただ願っていた。