プルル、プルル、とコールが相手を呼び出す。
「お電話ありがとうございます、」
「歌いたい歌が、あります。歌わせてください」
相手が名乗るより先に私ははっきりと伝えた。
「……chiyaちゃん?」
「はい。俊平さん、忙しい時間にごめんなさい」
「あぁそれはいいよ。今日は暇だし。歌ってくれる気になったって、どうしたの?」
「歌いたいと思えるようになったんです」
「そうか。それは大歓迎だな。そうだなぁ、明日は定休日だし、明後日はどう?」
“明後日”それは、私がこの世界からいなくなる日だ。
その時までに私は生きていられるのか?
一か八かの賭けみたいなものだ。
歌える?歌えない?
歌えたところで運命はきっと変わらないことも知っている。
それでも私は、歌いたいと思う。
「お願いします」
そう伝えると、俊平さんは電話の向こうできっと笑った。
「待ってるよ。……誕生日もお祝いしような」
「知ってたんですか?」
「当たり前だろ?俺も兄貴もシキも、chiyaちゃんのファンなんだから」
「ありがとう、ございます」
「うん。じゃあ、明後日、よろしくね」
「はい。よろしくお願いします。……急ですみません」
「全然?楽しみにしてる」
「はい」
通話を終えて、バタンとそのままベッドに倒れこんだ。
どう転んでも変えられないのなら、ちゃんと心に素直でいよう。
そのまま横を向いたら、小さな猫のぬいぐるみがこちらを見つめていた。
“心に素直で”か。
それならば、この気持ちにもいっそ素直になれれば楽なのに。
そうもいかないのが世の中の常。
この数日間でどれだけ同じことを問い、同じ答えにたどり着いただろう。
「自分の感情が一番厄介だよ」
小さな猫に呟いても、返事は返ってこないままだ。



