世界が終わる音を聴いた


「お前はこのまま、この世界から消えてしまっても良いのか?」

その言葉に、ぐっと息が詰まる。
“彼”の笑顔が痛い。
わかってる。
諦めた“ふり”をしているけれど、本当は心の奥底で燻る想いがある。
でも……

「あと5日しか時間がないのに、私にはどうにもならない」
「どうすることもできないんじゃない。どうにも動いてないだけだ。結果なんてものは、動いた後に付いてくる付属物だ」
「私に、叶えられないことがわかっていても足掻けというの?」
「……願いが」

それまで、笑みを絶やさなかった“彼”は、すい、とまたもとの無表情に戻る。

「願いが、叶うとわかっている者など、いない」

それもまた、真理だ。
願いなど、叶わないことの方が多い。
それでもなお、叶えたいと努力し、足掻き、もがく者のほんの一握りが、それを叶えられる。
例えば、スポーツなら。
勝ちがあれば負けがある。
それはどんなに実力差があったとしても、どちらに転ぶ可能性もゼロではない。

「願いも、想いも、夢も、……その人生そのものも。“叶うかどうかわからない”から、足掻くんだ。わからないから、面白いんじゃないのか?」
「わからないから……」

真っ直ぐな瞳が、私を射抜く。

「わかりきったことだと見切りをつけた瞬間に、そのようにしかなれなくなる。お前の人生に見切りをつけたのは、お前自身だろう?」
「……そうなのかもしれないね」

そう答えながら、気付かされる。
何もない平凡な日々を生きることは確かに良いことだと思う。
けれどそれは、確固たる自分があってこそ、だ。
自分を、自分であると誇れること。
これが自分だと認められること。
私は……今のままの自分を、受け入れることができている?
そう問いかけることが、既に答えのようで。
結局、多分、さっき幹太と話終えたときに見えた感情が答え。

「……お前は、本当に、今のままでいいのか」

その言葉をきっかけに鼻の奥がつんとして、目頭が熱くなっていく。
そんな私を見て“彼”は跪き、手を差し伸べる。

「立てるか?」

無表情のままで“彼”は言う。
けれど、“彼”の言うことを受け入れたし、その言わんとしていることさえ私は理解していた。
“彼”のその手を取って私は立ち上がる。

――私に残された時間は、あと5日。