世界が終わる音を聴いた


ずっと無表情でいた“彼”は、初めて表情らしい表情を見せる。
その中性的な顔をさらに美しくさせるように、にこりと微笑む。

「お前は知っているはずだろう?」
「何を?」
「人は。……拍子抜けするくらい、あっさりと死んでしまうことを」

それは、知っている。
足掻いて、抗って、もがいて。
どれ程、生きていてほしいと願っても。
どれ程、生きたいと想っていても。
人は驚くほど簡単に死んでしまう。
あんなにも強かった人も、そうだった。
私には“彼”の言うことを否定できない。

「そうね。人は簡単に死んでしまう。……でもだからといって、私の命とは無関係で無責任な話。あなたの言うことを信じる理由はどこに?」

“彼”は美しい微笑みを絶やさず、私に言う。
私の反応など、想定の範囲内と言うことだろうか。
微笑みが、イヤミのようにその顔に張り付いている。

「残念ながら。俺は“魂を送ること”のみが仕事なので、信用するしないは任せるしかない」
「……わざわざ、私の前に現れたその意味は?」

“彼”の言う“魂を送ること”というところには触れず、目下の疑問をぶつける。
いや“魂を送ること”っていうのも大いなる疑問ではあるのだけれど。
そんな非現実的なことなんて、その存在がそもそも半信半疑であるためにスルーするしかない。

「まぁ、普段は人に死期を伝えるなど言語道断だが。……お前を送る、ことを、他の誰かに譲ることはできなかった」

なんだか、告白みたいな言い分に目を丸くする。
そんなことをお構いなしに、“彼”は表情を崩さないままに話す。