世界が終わる音を聴いた


chiyaという存在に、救われた?
無鉄砲で、無邪気な、夢は叶うと信じていた幼い私に?
それなら、夢を諦めた私は、なんなんだろう。
今もここから立ち上がれずにいる、私は。
誰にも必要とされていない、居場所がない自分。
くじけそうで、バカみたいで、何でもないふりが得意で、弱くて、情けなくて、惨めな自分を隠している、自分。
だけど、本当は―――……

逃げたいよ。
そう思っても、逃げられないことは知っている。
だから私は、夢も恋も諦めて、ここにいるんだ。


ふわりと、また風が吹いた気がした。
誘われるように顔を上げると、目の前にはまた“彼”がいた。
こないだと同じように真っ白なスーツを着て真っ黒な髪を垂らしたその人は、今日もまた落ち着いた声で話す。

「それで、お前はどう生きる?」

この雑踏の中、彼の声はやけにクリアで。
初めてまともに見えたその顔は、色が白くて、少し垂れ目な中性的なものだった。
日常の中では中々見ることもないだろう、汚れの見当たらない真っ白なスーツという、やや奇抜な服を着ながらも彼は誰にも注視されていない。
こんなにも、この街に不釣り合いだというのに。

「どう生きるも何も……」
「お前の命はあと5日だ。分かっているのか?」
「分からないよ」
「伝えただろう、この間」
「あんなの、本気で信じると思うの?見たこともない人に、あんな一方的に言うだけ言われて」
「だがお前は、信じるだろう?」
「どこにその根拠が?」

意味のない押し問答だと思う。
この人が言っていることは、そもそもが無茶苦茶で、その存在さえもどこか怪しい。