世界が終わる音を聴いた


車が行き交う大通。
ガードレールを背にして、学生とも社会人ともとれるくらいのハタチそこそこの子達が、ギターをかき鳴らし、あるいはキーボードを弾き、タンバリンを叩き、思いのままに、自由に歌う。
知らない間に足を向けていたのは、どうやら、かつての私の“ステージ”だった。
衝動的に、足が動いていたのだろう。
まだ私が夢を諦めてなかった頃。
純粋に歌が好きで、楽しくて仕方がなかった、あの頃。
ここで私は、確かに“生きて”いた。

立ち止まることなど稀な足の群れ。
マイクも通さず、かき鳴らす弦の音と紡ぐこの声のメロディーはともすれば、雑踏にかき消されてしまうほど、か弱く。
指先が切れるほどギターを鳴らせば、声の限りに歌えば、誰かのもとに届くかもしれないと言うその志だけが、強かった。
懐かしい。
この場所で歌う私は、ここにいる子達とたいして変わらず、まだ、心はとても自由で、軽くて。
幼さが感じさせる特有の物かもしれないけれど、本気で、なんだってできる気がしていた。
今ここで歌っている彼らも、きっと同じなんだろう。
息抜きや趣味と言う人の方が多いかもしれない、けれど。
ここで歌うことで、きっと、自分が自分でいられるんだろう。
あの頃とは随分、ストリートミュージシャンも変わっている。
当たり前だ、私がここを去ってからもう何年も経っている。
ふわりと耳に届いた音に、足を止めた。

――心地のいい、声だ。

感覚を委ねて、私は目を閉じる。
彼の紡ぐ音の波が私を包む。
優しくて暖かくて、膝を抱えて座り込んでいた。
知っているその歌を、私も聞こえないくらいの音で口ずさむ。
雑踏はいろんな人の声を、音を、かき消していくのに、ハッキリと耳に届く彼の歌は私の心に染みていく。
彼と私の距離は、ギターケースひとつ分。
ほとんど真正面で、向かい合って、座り込む。
曲間に喋ることもなく、黙々とチューニングをして、するりと歌い出す。
それを何曲か繰り返していたけれど、私も飽きることなく、彼の歌に耳を澄ませていた。