世界が終わる音を聴いた


立派な成人、もちろんそんな大病だとは思ってもいないものだから、ひとりで病院に行った姉は、その時点では病名を告げられることなく詳しく検査するという名目で即日入院を余儀なくされた。
それと同時に、両親は病院へと呼び出され、姉の病状を告げられたのだ。
よく聞く言葉だが、頭を横からハンマーでガンっと、殴られたみたいな衝撃だった、と父は言っていた。
私はそんな家族の中でひとり、姉が家に居ない違和感を覚えながらも、のうのうと過ごしていた。
家の中は人がひとり居ないだけで、広く感じたし、どことなく空気は重くてどんよりとしていた。
ヒナちゃん、早く帰ってこないかな、が正直な感想だった。
結局、そのまま詳細な検査をするために4日ほどの時間を要して、姉は“スキルス胃癌”と正式に診断をされた。
その時、すでに腹水が溜まっていて、手術をすることすらできなかった。
姉は自らの意思で両親と共にその診断を聞き入れ、言ったのだ。
『そうですか、わかりました』
と、ただ、一言。
医師から告げられた余命宣告……それは、死の宣告。
後に聞かされた私も、両親も、受け入れる他何もできず、これまでの日々を悔いた。

きっと、同じ境遇に立たされたのなら、誰もが思うだろう。
何故、もっと早くにわからなかったのか。
何故、気づくことができなかったのか。
何故、……他の誰でもなく、ヒナちゃん、だったのか。

誰か助けて。
この状況を、誰が。
誰が救ってくれるのか。
探しても見つからない。
時間は何も知らず、流れていくばかりだ。
泣き喚きたくてもできず。
忘れることもできず。
脳裏によぎるのは、数々の予兆を見逃してきた後悔ばかり。

もっと早くに病院にいくことを勧めていたら。
病院嫌いだからって、健康だからって。
無理矢理にでも、連れていけば……
そうは思っても、時間は戻っては来ないのだ。