自席に戻り、椅子にかけてあるブランケットを膝にかける。
クーラー直撃の席を与えられるようになってからは、常に置いてある。
置き傘ならぬ、置きブランケットだ。
営業職の人と違う、事務職の私たちにはごく限られた時にしか席を立つことはない。
古い冷房は、世の中のクールビズの流れなど露知らず、温度の概念を忘れてひたすらに室内を冷やす。
広くはない室内だが、狭くもない室内に、パソコンや人が入り交じると中々どうして。
一台で必死に頑張っているこの冷房の冷気は端までは渡らない、らしく。
一番暑そうな部長が、窓から太陽が燦々と降り注ぐ、一番見渡しの良い端の席を離れるわけにもいかず、パタパタと扇子で扇ぐ姿を見れば温度を上げるわけにもいかず。
……となれば、自衛は必須だった。
それにしたって、外は暑そうだ。
お茶を一口飲み、仕事の続きに取りかかる。
時々鳴る電話を取り、数字を合わせ、間違いを訂正し、印刷して、コピーをして。
休憩になれば、公園の日陰でお弁当をつつき。
食後のコーヒーを飲んで、眠気を遠くへ吹き飛ばして、またクーラー直撃の席に戻って。
次の仕事をもらい、仕上げ、会議のための資料をまとめ、次の仕事に必要そうな資料をピックアップする。
昨日も同じようにして過ごしていたし、明日もきっと同じように過ごしていくのだろう。
変わりなく、滞りなく。



