世界が終わる音を聴いた


馬では行けない裏道を駆使して俺は先を急いだ。
どんなに近回りをしたとしても、相手は馬の足だ。
急ぎすぎと言うことはない。
息を切らして行き着いた場所には新しく馬の通った様子はなく、俺はそこで待ち構える。
乱れた呼吸を整えつつ腰に下げたピストルを手にして、静かにその時を待つ。
耳をすませばやがて聞こえてくる、蹄が土を蹴る音。
まず始めは目立ちたがり屋の酋長。
馬の足の速さを自慢するがごとく、ひとりで駆けてくる。
二番手の息子との距離が三馬身ほど離れていることを確認して俺は引き金を引いた。


――パンッ

乾いた発砲音が空気に乗り、火薬の焼けた臭いがする。
右手には振動による鈍いしびれ。
しかし、俺の視線はぶれることなく真っ直ぐにそれを見ていた。
弾丸は見事に酋長の胸に刺さり、その体ががらりと傾ぐ。
しかしまだ意識があるのか、手綱を放さず体を支えようとするが、おとに驚いた馬の暴れ具合に敵うほどの力はないようで、ついには地面に振り落とされた。
その様子に息子の馬も息子も驚き、暴れだす馬から意表を突かれて父同様に地面に叩きつけられている。
二頭の馬はそのまま森の中へと駆け出す。
馬はやがて街にたどり着き人々が“何か”あったと悟るに至るだろうが、事の決着を終えるにはそれほど時間はかからない。

俺はようやく繁みからその親子の前に歩み寄る。
見ると酋長はその服を自らの血で染め、手を震わせて口から泡を吹いている。
間もなく命の終焉が訪れるだろう。
そして息子は……。