世界が終わる音を聴いた


なぜ君なのか。
君だったのか。
こんなにも心が惹かれていく。
君と出会って知ったのは“愛しい”という感情。
君が同じ感情を抱いていたことを、知っている。
きっとお互いに口に出していなかっただけで、ずっと知っていた。
知っていたところで、口にすることなどこの先もないはずだ。
何故ならそれは、言ったところで叶うはずのない物だから。
口にしてしまえば、ただ苦しいだけだから。
だってそうだろう?
今ですら、こんなにも苦しいのだから。



抱き締めた体は思っていたよりも小さく、柔らかく。
君はいつの間にか、大人になった。
誰よりも魅力的な、女性になった。

これが最初で最後――。

その震える肩に手を置いて、俺はそっと顔を覗く。
閉じていた瞼がゆっくりと開いていき、視線が交わる。
少し微笑んだその瞳が、お願い、と言っている気がして、君の唇に静かに触れた。
その柔らかさを、温もりを、全て自分のものにしたいと思う。
君の言う通りに、このまま連れ去ってしまいたい。
“一度きり”のはずなのに、一度知ってしまえばそれを知る前よりも手離し難くなる。
それでも、それを知らなければよかったとは思えない。

『ルナ、君が好きだ。愛してる』

決して口に出すことのない想いを心で何度も呟く。

『ハデス、あなたが好き。愛してる』

決して聞こえないルナの想いが、唇から伝わる。
この唇が離れたら、この部屋を出たら、ふたりはこれまで以上に遠い存在になる。