これはあれだな。
巷で聞く適齢期になると親がやたらと結婚をせっつくようになる、というあれだ。
私もとうとう、そんな年齢に差し掛かるわけで。

……とはいえ、今はそんなことに頭を抱える時間はひとつもなく。
ごくりと、お茶を飲み干すと、早々に食器をまとめる。

「ごちそうさま。……いつもありがとう」

いつもは言わない一言を付け足して、先程の答えにすると、母はまた呆れたようにため息をこぼした。
どうやら意図は伝わったようだ。

食器を片付けて、パタパタと出ていく準備を進めて7:20に家を出る。
これが、毎日の私のルーティーンだ。
時間ギリギリまで眠りたい。
故にいつも、朝は戦いなのだ。
とはいえ、自転車を猛ダッシュで走らせることは危険なのでよっぽど遅刻しそうなとき以外はしない。
そのために、いつも“家を出る”までが戦いなのだ。

見慣れたいつもの街並み。
朝のこの時間帯、自転車を走らせるのは気持ちが良い。
気を付けなければいけないのは、小学生の集団登校。
あっちを向いたりこっちを向いたりしている時があるので、スピードを落として慎重にならなければいけない。
その集団を抜けて、大通りに平行するように自転車を走らせていると、突然車が飛び出してくる。
ギリギリのところでブレーキを掛けて事なきを得たけれど、心臓に悪い。
大体、ここは多いのだ。
大通りの一方通行に向かって左折しようとしている、こちらを見ようともしない(大通りの車ばかりを見ている)乗用車が。
悪びれもなく飛び出してきたことに腹を立てながら、それでも遅刻しないように自転車を漕ぐ。
あまり息巻いていて自分が加害者になってはいけないと、信号で止まったときに深呼吸をして空を仰いだ。
夏の空は朝から高く、街全体が明るく見える。
降り注ぐ光は……暑いけれど。

これは、会社につく頃には今日も汗だく決定だ。