手だけでゴメン、として学くんは電話に出る。
とたんに柔らかくなる表情と声が相手が誰かを表している。
妙な疎外感を覚えて、電話が切られたのとほぼ同時に思わず聞いていた。
「大石さん、私が居なくなったら、どう思いますか?」
おもむろにそんなことを言い出した私に、訝しげな表情を見せつつも定型通りと思える言葉を繋ぐ。
「……君がいなくなるなんて考えられないよ」
「それなら、」
それならいっそ、一緒に死んでください。
その言葉は飲み込んだ。
わたしが居なくなったって、あなたは菜々美さんに愛を紡ぐ。
当たり前だ。
ヒナちゃんを見るように、菜々美さんを見るように、その瞳が私を捉えることはない。
「君はいつまでも、かわいい大切な妹だよ」
耳に届いたその言葉は、そのまま胸に落ちていく。
ねぇ、誰か教えてよ。
神様だったら教えてくれる?
もっと生きたいと願うのは、わがままだろうか?
もっともっともっと、生きたいのに。
あなたに愛されたいのに。
“たったひとり”に愛されるチャンスが欲しいのに。
……あなたに私が幸せになる瞬間を見せつけてやりたいのに。
死にたくない、生きたい、この命にしがみつきたい。
知らない間に流れていた涙を、この人はぬぐってはくれない。
ただ優しい瞳で私を見て、頭を撫でる。
まるで子供をあやすように。
私はその手を振り払って、自ら涙をぬぐう。
「学くん!」
そう呼び掛けたら、目を丸くして驚くから、私は最高の笑顔を学くんにあげた。
そしてもう、何年も出してこなかった、初めて出会った頃のような無邪気な妹の私に戻って“あっかんべー”ってしたら、学くんはすごく嬉しそうな顔をして、笑った。



