世界が終わる音を聴いた




5曲全てを歌い終えると、お客さんから拍手をもらう。
それが暖かくて嬉しくて、涙が出そうになった。

「貴重な時間、耳を傾けてくださりありがとうございました」

頭を下げて、バックヤードへ下がるとシキさんに抱きつかれた。
その後ろで俊平さんが笑っている。
俊平さんとオーナーは入ってくるお客さんを対応しつつ最後まで時間の許すところで耳を傾けてくれていたことを知っていた。
ステージから私が降りたことで、完全に仕事を再開したらしくオーナーは厨房にこもっている。

「お疲れさま」
「良かった。とっても、素敵だった」
「ありがとうございます」

口々に言われて

「私のステージが霞んじゃうわ」
「そんなことありません。シキさんは唯一無二です」
「ありがとう。でも、あんなステージを見せられたあとじゃ、私の今日のステージも、きっと忘れられないわ。大切に歌う」
「同じ歌い手として冥利ですね」

シキさんがようやく私を解放して、その顔が涙に濡れていることを知った。
その事で言葉が偽りではなく本心だということを思い知る。
そのまま見ているとやっぱり泣いてしまいそうだったから、私は荷物をまとめ始めた。

「もう帰っちゃうの?」
「はい。今日は家族にお祝いしてもらわなきゃなんで。……わがまま聞いてもらって、ありがとうございました!」

後ろ髪を引かれる気持ちでお礼を伝えて、荷物を持つ。
俊平さんとオーナーにもお礼を言うと、みんなそれぞれに、また待ってるよ、と言ってくれた。
それに対してもう私は、はい、と言うことができなくて曖昧に笑うしかできなかった。