世界が終わる音を聴いた


私がステージに立つと、BGMが止まる。
その事に気付くことなく話し続けるお客さんも、次第にごそごそとしているこのステージに気付き“?”と、好奇心の入り交じった瞳でこちらを見ている。
さぁ、始まりの時間だ。



「こんばんは、chiyaと言います。前にここで少し歌わせてもらってたんですけど、歌から遠ざかってもう何年もした今更ですけど、皆様のお耳汚とは承知で今日は歌を歌わせてもらいに来ました。長い時間ではないので、よろしければお付き合いください」

挨拶をすると暖かい拍手で歓迎してくれる。
たったそれだけのことでもう泣きそうになった。
少し高くなったステージから見ると、空いた席にシキさん、俊平さん、オーナーまで座ってる。
その姿を見て強ばっていた心が解れ、ギターに手をかけた。

音楽が好きだ。
歌うことが好きだ。
ただそれだけで音楽をしてきた。
諦め、挫折して、見ないふりをした時間も、ここにたどり着くまでに必要だった時間だと、今は素直に思える。
立ち止まることがなかったら、それはそれでいいことだと思うけど、立ち止まった時間が教えてくれたものも確かにある。
前を向いているだけだったら、足下の花にも気付かなかった。
空が青いことにも気付かなかった。
支えてくれていた存在にさえ、気付かなかった。

さぁ歌おう、この世界の全てを。
痛みも苦しみも弱さも醜さも。
幸福も強さも美しさも喜びも。
その全てが愛しいから歌える歌がある。