並んで歩いているのは変な感じがする。
隣に人がいるってこと自体が、私は慣れていないんだよね。
ましてこんなイケメンとか。
顔が似ていなくても、他人は兄妹か親類縁者って思うよ、きっと。
「永屋さん寝起きいいんですね」
「俺、あんまり二日酔いってしないんだ」
「その割には酔ってるときは酷くないですか」
人をかなり振り回してくれたと思うんだけど。
「だって和賀さん、なんだかんだ言って面倒見てくれるからさ」
ニコニコ笑顔で言われてもな。
「私は雑用係じゃありませんよ」
「そういう意味じゃないよ」
ふと、真横の永屋さんが立ち止まる。
なぜだろう。その時、空気が変わった気がしたのは。
「……和賀さん、本気で分かってない? それともわざと流してるの?」
逆光で、顔には影がかかっている。笑っているけど目はあまり笑っていない。
私は何をしたんだろう。今までの話の中で怒らせる要素なんてなかったはずなのに。
コミュ障だから分からないの?
「何をですか?」
「なんで俺が和賀さんを引き留めたと思う?」
「味噌汁が飲みたいって言ってましたよね」
「それ、信用したんだ?」
違うの?
口元が引き締まる。途端に、威圧感が半端ない。
「男の部屋に泊まるって危険だって思わなかった?」
えええええ!
あんなにしつこく引き留めたくせに何言うかな。
そして実際危険でも何でもなかったじゃん。



