「親との同居とかってどう? 親居れば、家事は任せられるよ?」
山海さんが言うと、美波ちゃんは唇に手を当てて考える仕草をする。
「同居って今どきあるんですか? 確かに子供できれば楽かもしれないですけどー。家でまで気を遣うとかしんどくないですかね」
「それは確かに!」
こぶしを固めて加わる。
そうだよ。専業主婦にはなりたいけど、同居とかは勘弁だ。
あ、なんかこの飲み会。婚活に向けて自分の気持ちをまとめるのにはすごくいいのかも。
「そっかー」
あからさまにテンションダダ落ちの山海さん。
私と美波ちゃんが心配そうに見ていたら、永屋さんが耳打ちしてくれた。
「山海んちは、親居るんだよ。親父さん、早くに亡くなってて」
「あら、そうなんですか」
「じゃあ、お母さんとふたりなんですか? 山海さん」
「んー、まあね。おふくろもパートしたりしてるけど。俺だと話し相手にならないじゃん。やっぱり男は駄目ねって言われるばかりで。嫁さんもらってやらなきゃなぁって思ってるんだけどね」
「……だから、合コンたくさんしたがるんですか?」
美波ちゃんが身をのりだす。
ギョッとなった山海さんは思わずビールを一気にあおり、むせた。
「きゃあ、大丈夫ですか。山海さん」
背中をさすりながら、美波ちゃんが優しく言う。
「……でも見直しました。優しいんですね、山海さん。ただの合コン好きかと思っていたら、お母さんを思っての事だったんだ」
いい雰囲気にはなったけど、やっぱり美波ちゃんの勘違いが炸裂している。
美波ちゃんが、山海さんの気持ちに気付くのは一体いつになるのだろう。



