私がまだいないからか、世間話でもしているのだろう。
声を立てて笑いながら話すふたりは、見た目の美しさもあってそこだけ別世界に見える。
なんだかお似合い……と思ってしまったら足が止まってしまった。
仕事もできて見た目も華やかなふたりに交じって仕事するとか大それすぎてて、分不相応な私がそこに混ざるのはおこがましいというか。
ああ……なんか逃げ出したい。
「あ、和賀さん」
途中で立ち止まってしまった私に気付いたのは、永屋さんだ。
手招きされて、足が動き出した。
近づくと、私が持っている小さなお盆から「ありがと」とコーヒーを取っていく。
「和賀さんは気が利くねぇ。いいお嫁さんになるよ」
「……っ」
“お嫁さん”
その言葉に動揺してしまった。
そうだよ。私の最終目的は専業主婦じゃん。
だから、こんなに大それた仕事しなくても本当はいいのに。
永屋さんの声に、私より先に突っかかっていったのは三浦さんだ。
「なによ、それは当てつけなの?」
「三浦が結婚できないなんて言ってないじゃん」
「いーや、遠巻きに言っているわよ。どうせ私は仕事ばっかりですよーだ」
「あれ? 彼氏いたじゃん」
「もうとっくに別れたよ」
喧嘩しているようだけどふたりとも顔は笑っている。
仲、いいよねぇ。同期だからってここまで仲良くなるものかなぁ。



