「やめときます」
「バッサリだねー。和賀さん」
「そもそも、業務時間内に言うことでもないですよね。空気読めないんですか」
どうにも田中さんにはイライラさせられるな。
会社の人間との間に確執とか作りたくないけど、ちょっと我慢ならない。
遠慮も無くバッサリ言ったら、田中さんは楽しそうに笑いだした。
「ははは。和賀さん、面白いね。空気ってね、読むものじゃないんだよ?」
「……?」
まさか吸うものだよとかいうんじゃないだろうな、と黙って続きを待っていると、田中さんはドヤ顔で指を突き立てた。
「空気は作るものだよ!」
……そうかい。
うん、まあね。セリフとしては悪くないと思いますよ?
でもね、今現在空気作れてないですから。
私とあなたの間の冷め切った空気をどうしてくれる。
「そうですか。私、まだやることあるので失礼しますね」
「冷たいなー。まあいいや。付き合おうってのは冗談だけど、せっかく知り合いになったんだし、友好を深めていこうよ」
なんだよ。しかも冗談なのか。
そしてあれだな。出会った人は皆友達と思うタイプの人かな。面倒くさいなぁ。
「はあ」
「営業としては各部署に知り合いつくっときたいんだよ。今度何人か誘って飲みに行こうね」
飲み終わった紙コップをクシャリと潰し、ひらひらと笑顔で手を振り立ち去る田中さん。
なるほど。こういう会話から社内合コンみたいなのが開催される運びになるのね。
田中さんのことは置いておいて、そういう努力は確かに必要なのかなぁ。
私なんて、婚活したいって思ってる割には、何の行動もしていないもんなぁ。
いきなり婚活サイトに登録する勇気もないし、少しは人と話すようにしないと駄目だよなぁ。



