コミュ障なんです!



 お昼になると岩田さんが小さなカバンを持ってやってくる。


「香澄ちゃん、お昼行こう?」

「はあ。……あれ、でも」


いつも一緒のふたり組はいいのかな?

ちらりと後ろを見ると、彼女たちはきゃあきゃあ言いながら食堂の方へと向かっていくところだ。
岩田さんのことを少しも振り返らないのが、なんか嫌な感じ。


「神谷さんと川西さんはいいの?」

「いいの。今日は香澄ちゃんと食べるんだ」


でも私と食べたって面白いことなんかないと思うんだけどな。
私がもっと愛想のいい人間なら、四人でって話になるはずなのに。
なんだか、三人の仲を引き裂いてしまった気まずさまで感じてしまう。

うちの会社は自社ビルだけど、関連会社へフロアを貸し出してもいて、ビル全体には他の企業も何社か入っている。

二階には共用の食堂があって、お値段設定が安めなので私は結構利用している。
でも、他の会社の人と大テーブルで食べるのは苦手って人もいて、利用率は五十%くらいしかないらしいけれど。

食堂に行くときは小さなカバンを持って歩く。財布と、スマホと、文庫本。これだけあればひとりでも平気だから。