コミュ障なんです!



「その時ははっきり断るのね。できることとできないことの線引きはしっかりしておかないと、後々誤解を生むわよ」

どっちだよ。
線引きって言うけど、どうやってひけばいいの。
だって無理難題って思っても頑張ったらできたりするよね。どこまで頑張るのが正しいのかなんて判断できないよー。

そういう、会話しながら相手との距離を測るようなのは本当に苦手なんだってば。


「……難しいです」


正直に言うと、三浦さんは私をじっと見た後、力を抜いたようにふっと笑った。


「もしそうなった場合は、永屋くんに相談してみるといいわ」

「永屋さん……ですか?」


でも、実際仕事を受注しちゃったら、営業さんあんまり関係ないよね。


「本来私たちは、お客様の望むシステムを作るのが仕事。関係性を維持するのは営業の本分なんだから、あまりに無理な注文されたら、営業の方からやんわり断ってもらえばいいわよ。和賀さんは何でも自分でしなきゃって思ってるかもしれないけど、そんなことないのよ。フリーランスで仕事してるわけじゃないでしょ。企業に所属している意味をちゃんと考えなさい。あなたにできないところはいくらでも別の人間がフォローできるのよ。さ、まずは契約を取るほうが先決。頑張って!」


三浦さんが美しき微笑みを見せる。

格好いいなぁ、三浦さんは。
きっと、仕事が楽しいんだろうし、誇りも持ってるんだろうなぁ。

私も仕事は好きだけど、人間関係が入ってくると途端に駄目だ。
三浦さんの言葉に一瞬気は楽になったけど、今度はそれを永屋さんに話すのかと思うとそれはそれで気が重くなってくる。

私が悩んでいるようなこと、営業さんみたいな話し上手に言っても通じる気がしないんだよね。

画面とだけ対話していたいな……と切に思う。

結局、三浦さんの言葉をそのままいただいて、メールを返信した。
この仕事が取れればいいな……という思いはないわけじゃないけど、受注した後で自分がちゃんとお客様と対話できる自信はまったくなかった。