コミュ障なんです!



たくさんの人を乗せた電車が、会社の最寄り駅に着く。

混んでるのは疲れるけど、別に人混みは苦手じゃない。
所詮、他人の集合体。話さなくていいのならば、何も構えることはない……のに。


「和賀さぁん!」


距離にしては一車両分くらいあったのに、目ざとく私を見つけて、大きな声を出して近寄ってきたのは岩田さんだ。
やばい、心臓がバクバクする。
なに話せばいいの。岩田さんとの共通の話題って何?


「お、おはようございます、岩田さん」

「おはよう。会社まで一緒に行こう?」


ふたりで?
その間、十分ほどありますけど一体何を話せば?

昨日から誤解されているみたいだし、困る。
あ、でも、昨日の話なら共通の話題か?

私の葛藤などお構いなしで、岩田さんは自然に隣を歩き始めた。


「昨日の飲み会、田中さん失礼だよねぇ。でもやっぱり和賀さん凄いよ。格好良かった」

「そ、そんなことはありませんよ。その、田中さん、怒ってましたか?」

「大丈夫。どうせ覚えてないよ。いっつもそうだもん」

「そうなんですか」


なんだ、それじゃ怒り損じゃないの。
損した気分。


「あの人、酒ぐせ悪いって有名なんだ。営業との合コンだと必ず来るんだよね。山海さんが合コン好きみたいで結構誘われるんだけど、田中さん入れないでっても言えないじゃない?」


頬をふくらませたまま言う岩田さん。

山海さん……。
ただの合コン好きみたいに思われているけど大丈夫ですか?

この私でも分かるくらい山海さんってあからさまに岩田さんを狙っていたように思うんだけど、本人本気で気づいていないのかな。

まあ、思い込みも激しそうだもんなぁ。
最初に合コンとして誘ったのが間違いって感じ?