ふたりで帰社した後、永屋さんは「報告した後で行くから、会議スペース取っておいて」と言い残して営業部に向かうため上の階へ行ってしまった。
私はシステム開発部のほうへ向かう。途中に技術部のブースがあり、謝らない男として有名なCEさんが、後輩らしきCEさんを怒鳴っている。怖いなぁ。あんなふうに怒られたら何にも考えられなくなっちゃうよ。

時刻は定時から三十分後の十八時。

部署にもよるけど、定時を過ぎると空気がピリピリするよなぁ。
おなかもすくし、イライラするのは分かるけどね。でも空気悪いの嫌なのよ。

最近、組合のほうから 『残業を減らそう』と呼びかけられているけど、あれはホント賛成。
イライラした状態でやっても能率悪いじゃない。


システム開発部では、今月納期のチームがそんな空気を醸し出している。

私は今ちょうど三浦さんのサポートとして新規プロジェクトに入るところだったから、楽な時期だ。
今日の営業先での仕事が今回っきりなら……の話だけどね。


「戻りました」


三浦さんに声をかけると、彼女はさっそく手招きする。


「ああ、お帰りなさい。ちょうどいいわ。こっちのも報告するから来て」

「はい」


自分のデスクにカバンを置き、今日の資料を取り出す。戻ってからすぐ仕事ができるようにパソコンの電源を入れてから、彼女のもとに向かう。