「……でも、俺、レンタカーも返しに行かなきゃいけないんだよね。……着替え、持ってきてうちに来ない? 先に入って待っててよ」
おお、なるほど。
そうだよね、レンタカーだもん。駐車場もないし返さなきゃいけないんだ。
じゃあ別に、彼も好きで私を帰そうとしたわけじゃないって思っていい?
「ついでに何枚か着替え持っておいでよ。うちのほうが会社に近いんだし」
「はい」
少しの着替えを詰めて、再び車に乗り込む。
そして、彼の部屋に荷物を入れてから、私は彼の手を握った。
「私も一緒に行きます」
「え? でも寒いよ?」
「洋斗さんだってひとりで帰ってくるの寂しいじゃないですか。私も、ひとりで待っているより、一緒にいたほうがいいです」
おお、我ながらコミュ障脱却したかのようなコメントだな。
でもほかの人相手だったら、一人で待ってるほうが断然いいんですけどもね。
「……やっぱ可愛いなぁ、香澄! 姉貴や妹からはそんなこと言われたことない」
思い余って抱きつかれて、「ひゃああ」と悲鳴を上げつつ、彼を押しのける。
思えば、デートもエッチもみんなみんな、今日が人生で初めてなんだよ。
ただでさえキャパオーバーしそうなんだから、いきなり抱き着くのほんと辞めてください。
でも。
彼とだったら、一緒にいても会話に困ったりすることもないのかな、なんて、今日一日でずいぶん自信がついたみたい。
「行きましょう?」
自分から手をつないで、幸せをかみしめる。今日は最高のバースデー。
(ちなみに、母からのプレゼントのことはすっかり忘れていて、翌日に不在票を見つけました)
【Fin.】



