「すごいですね。たったこれだけなのに」
「顔も赤みが少し入るとすごく映えると思う。だからあの色のフレームつけさせたいなって前から思ってたんだよね。自分の彼女におしゃれさせるのって楽しいよね。会社行ったら田中に見せびらかしてやる」
鼻歌を口ずさみながら、何の気なくそういうけど。
私を一番綺麗にさせるのは、あなたのその言葉なんじゃないかと思う。
かわいいとか、綺麗とか。
言われていたら心が華やいできて、今の私、顔の筋肉が緩みっぱなしだもん。
「洋斗さんの誕生日の時は、私にお祝いさせてくださいね。……いつですか?」
「俺? ……あー」
なぜか言いにくそうに口ごもる彼。
「どうしました?」
「……三月三日」
「え?」
「ひな祭りの日なの。実家にいたころはさ、姉と妹に挟まれてちらし寿司とケーキが並ぶんだぜ? すっげー嫌な思い出しかない」
「そ、それは運の悪い」
笑っちゃ悪いけど。でも仕方ないよなぁ。ひな祭りはひな祭りで祝わないわけにはいかないだろうし。
「だから誕生日ってあんまりいい思い出ないんだけど。来年は楽しみだな。香澄と過ごせるわけだし」
耳元にささやかれて、カーッと血が上ってくる。
これは……私もしかして、自分でハードルあげちゃったってやつ?
「ど、努力します」
あっという間の二時間が過ぎて、新しい眼鏡に付け替えた私は、再び車に乗せられる。
「さて、魚とか見るのは嫌いじゃない?」
「え?」
「水族館に行くつもりなんだけど、嫌だったらここにシネコンもあるから映画でもいいかなって」
「あ、大丈夫。好きです、水族館」
「そっか。じゃあ移動しよう」



