「目がきれいだから黒縁で隠すのもったいない。それに、色白いじゃん。黒だと浮くと思うよ。もっと肌になじむ色のほうがいい」
赤はなじむのかよ、と思ったけれど、これが意外になじんでいる。
むしろただの銀フレームのほうが硬質な印象で、肌の色との違和感がある。ていうか、今まで顔の印象って眼鏡だけだったのに、ちゃんと顔のパーツひとつひとつが生きているような気がする。
「どう? 気に入った?」
「はい。でも眼鏡なら自分で買いますよ。生活必需品ですし」
「わかってないな。生活必需品だからあげたいの、俺は。いつでも俺の事思い出すでしょ」
うわ。なんかすごいこと言われた。
ひとり照れている間に、洋斗さんは店員を呼んでしまう。
彼から話を聞いた店員さんは、「じゃあ視力はかりますね」と私を視力計測器のほうへと連れて行った。
洋斗さん、退屈じゃないのかな。
心配しながら彼をチラチラと伺うと、楽しそうにサングラスを見ている。
誕生日プレゼントのつもりなんだろうけど、なんか不思議。
だって眼鏡って高いし、プレゼントされるようなものじゃないと思うんだけどな。
「はい、お待たせいたしました」
店員さんはにこやかに、レンズの種類を教えてくれる。
「今は薄型非球面のプラスチックレンズが主流ですね。UVカットも標準装備されております。カラーなど入れられますと別料金になりますが」
「そうだね。香澄、なんか希望ある?」
「ふ、普通のでいいですっ」
これ以上冒険したら会社にはつけていけないよ。



