そのまま、意識は本当に飛んでしまったらしい。
「着いたよ」と言われて目を開けると、ショッピングモールの駐車場のようだ。
街中歩きはいやでしょ? とか言ってたのに買い物なの? と小首をかしげれば、意図を感じ取ったのかにっこり笑ってみせる。
「ちょっと用があるんだよ」
再び、助手席の扉を開けてくれて、手を差し伸べられる。
慣れない扱いにまたドキドキしてきた。
すれ違う時に一瞬顔を見つめてしまうくらいに、洋斗さんは格好いい。だから、なんか隣にいるのが自分なことにすごく気おくれがするんですけど。
「なにか買い物ですか?」
「うん」
自動ドアをくぐったところで、眼鏡をツンとつつかれる。
「俺はさ、割とマイペースだから。もし嫌だったら言ってね」
「……はい?」
「今日の目的地はここ」
連れていかれたのは、一階に入店している眼鏡屋さん。
「ここ、当日渡しオッケーなんだよ」
「え? 洋斗さん、目、悪いんでしたっけ」
「俺のじゃなくて、香澄の。俺はこういうのがいいと思ってるんだけどさ」
洋斗さんが取り出したのは、メタリックな赤色で、細いオーバル型フレームだ。
「え、赤とか仕事中つけれませんよ」
「大丈夫。遊びっぽい赤じゃないから。かけてごらんよ」
「でも……」
言われて、渋々ながらかけてみる。当然今までかけていた黒縁の眼鏡は外したわけだけど、途端に視界はぼやけるので、いまいち似合っているかどうかなんてわからない。
ただ、フレームが細いせいかあんまり主張はしてこないな。



