「これでどう? 本当はポイントに明るい色がほしいんだけどな。ブローチピンかイヤリングか。まあ出先で買ってあげる」
そう独り言ちて、「ほら後の準備は?」と私を急かす。
「洋斗さん、おしゃれなんですね」
「いや、昔から妹の服選びにつき合わされてたから」
「……姉がいるって言ってませんでしたっけ」
「妹もいる。まだ大学生」
「は?」
「うち全員年の離れた三兄弟で、俺が一人だけ男なんだよね」
ああ……。
ナチュラルに甘えっこなのも、ナチュラルに人を構うのも、家庭環境の賜物かぁ。
そして、私が最終準備を整えている間に、部屋を片付けてくれる洋斗さん。
そのかいがいしさも、きっとそうだな。
姉妹の間で、いろいろとこき使われてきたのがうかがえる。
「お待たせしました。できました」
自分的には張り切ってお化粧をしてみせると、彼は満足げにほほ笑む。
「うん。香澄の化粧は自然でいいよね。騙されたって感じがしなくてホッとする」
それは喜ばれていいところなのか?
と思わないこともなかったけど、まあ、良しとしよう。



