しばし落ち込んだ洋斗さんは、営業仕込みのメンタルで復活した。
「……切り替えよう。デートしよう。香澄は一度帰って着替えてきてよ。できるだけおしゃれな恰好して」
「おしゃれって……どんな」
「いかにもビジネスって感じのスーツじゃなきゃいい」
でも私の持ってるスーツってそんなのばっかりだけど、まさかドレスコートのいるような店とか行かないよな。
私的には、まったり家にいるほうが気楽でいいんですけど。
「わ、私、庶民ですからね。そんなおしゃれなものとか持ってないですし。分を超えたところにも行きたくありません」
「俺だって庶民だよ。そんなすごいところには行かないって。でも、誕生日なら、いろいろ仕切り直したい。一度朝飯がてら外出て、送ってく。で、また迎えに行くから」
何なの、その面倒くさい流れ。
不満な態度をあらわにしてみたけど、彼の態度も珍しく頑ななので従うことにした。
近くのコーヒー店で朝食メニューを頼み、食べた後一度駅で別れる。
デートとか、普通なら嬉しいものなんだろうけど、経験値のない、ましてコミュ障な私にとっては気が重い部分もある。
だって、ふたりきりって、会話が途切れた時とか想像すると苦行。
むしろデートで呆れられて嫌われるとかアリだと思う。
……なんか、予想もつかないバースデーになってきたけど大丈夫かな。



