なんだか悔しいけど仕方ない。手だけを布団から出して、携帯を見つけ出し表示した。
どうやらメールは母からのようだ。
【Happy Birthday! 元気にしてる? プレゼント送ったからねー。たまには帰ってきなさいよ】
点滅した記号だの、キラキラした装飾がたくさん施されている。
母よ……若いな。……じゃなくて。
「あ、今日誕生日だった」
ここのところ、色々ありすぎてすっかり忘れていたけれど、和賀香澄、本日から二十八歳です。
「は? 誕生日?」
気が付けば、洋斗さんが食い入るように画面を見ていた。
「誕生日って、……香澄の」
「はい」
他人の誕生日のお祝いメッセージを娘に送るほど、うちの母はボケていませんよ。
なんて心の中で毒づいていたら、洋斗さんが見るからに慌てだした。
「なんで教えてくれないんだよ」
「えっ、だって、私もすっかり忘れてたし。言うタイミングもなかったじゃないですか!」
「そりゃそうだけど。……うわー、ショック。初デートも満足にできてないのに誕生日スルーとかあり得ない」
「スルーはしてないじゃないですか。今日ですし」
処女喪失から始まるバースデーとか、ある意味すごく印象に残るよ。



