「出ないの? あ、切れた」
不思議そうに問いかけてくる洋斗さん。
あなたがいるから出れないんですよ、とは言えないので、遠回しに追い出そう。
「あれメールです。それよりその。洋斗さん、シャワーとか浴びないんですか。きっとさっぱりしますよ」
キョトン、としていた彼はすぐに眉を寄せて私に疑念を含んだまなざしを送ってきた。
「なんで追い出そうとしてるの。見られちゃまずいことでもあるの」
どうやらメールの内容のほうを邪推しているらしい。
違うって、見られたくないのは貧相な体だわ。
「違いますよ。じゃあ、シャワーに行かなくてもいいからカバンとってください」
「いいけど……」と、半身を起こした彼は、ようやく私の意図に思い当たったらしい。
「もしかして見られたくないのは裸?」
「当たり前でしょう」
いちいち聞かないで下さいよ、恥ずかしい。
「いいじゃん、隠さなくても」
「だめです。裸族じゃないんですからこんな明るいところでいろいろ見せられません」
「はは。やっぱ香澄かわいいなぁ」
額に軽く唇を寄せて、彼は何も気にしていないように布団から出ていく。自分も見せたくないけど人のも見たくない私は、とっさに目をそらした。
くっ、経験値の違いがものを言ってる。この程度で恥ずかしがってしまうこと自体負けた気分だ。
「はい」
渡されたカバンを目をそらしたまま受け取ったら、ますます楽しそうに笑われた。
どうやら、私の言動は、彼的にはとても新鮮に映る模様。



