「でも俺うれしかったよ」


つむじのあたりにキスをされると、まあいいかって思ってしまうんだから女も単純だけどさ。
それにしても、覚醒してきたからか、彼の手が裸の肩や背中を撫で……そしてあろうことか胸を撫でてくる。
変な声が出そうになって、慌ててその手をつかんだ。


「朝ですよ!」

「時間はあるよ? 土曜だし」

「や、無理ですっ。痛いしっ」

「ちぇ」


いたずらするのは諦めたらしいけれど、なかなか離してはくれない。テレビのリモコンに手を伸ばし、天気予報を眺めながらも、もう片腕は私のお腹に回されたままだ。

なんだろうな、このマイペース感。
そしてこういうことをしても自分は嫌われないだろうっていう絶対的な自信。男女交際の経験値もあるかもだけど、これはもしや……


「洋斗さんって、上の兄弟います?」

「え? なんでわかる? 年の離れた姉がいるけど」

「やっぱり」


ナチュラルに甘えん坊なのはそのせいなんだな。
ああなんかいろいろ納得できてきた。


「それより、きょう天気良さそうだよ。どこか行こうか」

「で、デートってやつですか」

「そうそう。昨日は三浦たちに邪魔されたしさ」


鼻歌を口ずさむ彼が体を起こすと同時に、私のカバンからは着信ベルが鳴り響く。
しかもこの音はメールか。
とはいえ、布団から裸で抜け出すのって勇気いるんですけど。明るい中で裸見られるとか死ねる。