「ったく、洋斗(ひろと)! 好きな子に名前も覚えられてないとかショックだよ」

「すいません。もう忘れません。洋斗さん」

「罰として十回呼んで」


ひいい。こんな押し倒された状況で説教とか勘弁してください。


「洋斗さん、洋斗さん、洋斗さ……んっ」


自分で呼べって言ったくせに、彼の唇が私の口をふさいでくる。


「これじゃ、言え、……ないです」

「ダメ、十回言って」


キスの合間にしか声が出せないから、ものすごく時間がかかる。
しかもその間にも彼の手は止まらず、私の息を荒くさせるから、熱くて今まで感じたことのない感覚に体がおぼれそうになって、涙目になってきた。


「っ……洋斗」


もう、“さん”なんて悠長につけてる余裕はなくて、私は満足げに笑う彼をぼやけた視界で確認した。

変なとこ、意地悪なんだから。

でも、好きです。
私は、あなたが大好き。


言葉に出せたかどうかは覚えていない。
そのくらい呼吸が苦しくて、意識が遠のく寸前だったから。