三浦さんも迷いなく歩いていくところを見ると、確かに慣れた道なんだろう。
近くのコンビニのところで梶さんが待っていて、私たちを見つけて、手を挙げる。
途端に三浦さんの表情が不貞腐れたようになって、永屋さんがフォローに乗り出す。
「あんまり綺麗にしてないんですけど」
「いやいや、無理言って申し訳ない。……和賀さんも、いろいろ巻き込んじゃってすまないね」
部屋に入るとすぐ、梶さんは本棚のほうに向かう。
入り口で立ち止まってそれ以上奥に行くのをためらっているのは三浦さん。永屋さんはとりあえず梶さんの相手をしている。
「永屋さん、台所使わせてもらっていいですか。お茶淹れます」
「ああ。助かる」
気まずいのは私も苦手なんだよ。ここで三浦さんを元気づけるようなことも言えないしさ。何かしていたほうが気がまぎれる。
台所を家探しすると、インスタントのコーヒーを見つけた。
「みなさん、ブラックでいいですねー」
どうせ全うに返事だってこないんだから、と勝手に入れる。
大きさの違うマグカップを探し出してコーヒーを淹れ、三浦さんに差し出す。
「三浦さん、どうぞ」
「……ありがと」
「梶さんも永屋さんもどうぞ」
振り仰いだら、やっぱり梶さんは以前私が見つけた歴史の本を開いていた。
それだけじゃない。何冊も足元に並べられた本。その中に、三浦さんの写真が入っていて、梶さんは愛おしそうにそれを見つめている。
「三浦の写真? 俺、全然気づかなかった」



