三浦さんはおろした髪を指に絡めて、ふうと息を吹きかけた。
髪で目元が隠れて表情はわからない……けど、なぜだろうとても寂しそうに思えてしまった。
「そしたらこの間梶さんからまた電話がかかってきて、置いていった本でほしいものがあるって言われて……」
「二年前の話だぜ? 捨てたって言わなかったんだ?」
「……そういう手もあったか」
やっぱり梶さんに関しては、冷静さを失っているような気がするよ、三浦さん。
「まあいいけどさ。大方捨ててないし。でもタイトル言ってくれれば持ってきたんだけど、なんでわざわざ自分で見たいわけ?」
本棚?
あれ、もしかしてそれって……。
「歴史の本だったりしません?」
私の問いかけに、二人がそろって目を丸くする。
「え? なんで?」
「さあ。聞いてないけど。どうして?」
あ、でもこれじゃあ、私が勝手に本棚覗いてたのばれちゃう。
「いや、梶さんってなんか歴史マニアっぽいなーって」
ここは笑ってごまかそう。
プライベートの侵害をしたことはできれば知られたくありません。
「そうかぁ? どっちかというと俺にはファッション雑誌とかのほうが読んでそうに見えるけど」
「や、あの人、実は大河ドラマとか好きなのよ。見た目はほら、仕事柄気を使ってるけど」
「へぇ」
そうこうしているうちに電車は目的駅へと到着する。



