そして金曜の夜、三浦さんとそろってシステム開発部を出た私は、ロビーで腕時計を見つめる永屋さんを見つけた。
彼はこちらに気づくと軽く手を挙げて笑った。
……でも、顔が微妙にひきつっているな。
「……まだ怒ってるんですか」
「別に怒ってない」
嘘だ。なぜか私は、永屋さんの機嫌に関してだけは敏感になっている。
「あらやだ。一日デート潰されたくらいで心の狭い男ね」
辛辣に言い放つのは三浦さん。永屋さんはポーカーフェイスを投げ出し、三浦さんにジト目を投げかけた。
「言っとくけどただのデートじゃないから。初デートだぞ。俺にだっていろいろプランはあったのに」
「だから和賀さんも一緒にって言ってるじゃない。そう長い時間はかからないわよ。頼むから我慢してよ。私だっていい加減ケリをつけたいの」
ため息とともに三浦さんが言い放ったので、そこから何となくこの間の経緯を聞く流れになる。
「結局田中さんとはどうなったんですか」
「どうもなるわけないでしょう。田中くんはいつも通り自分の話を好きなだけ話して終わり。その後送ってもらって帰ったわ」
なんだそりゃ。それ一緒にいて楽しいのかな。
「三浦さんは……なんで田中さんが好きなんですか」
神経を疑いますよ。
自分に優しいとか、そういうきっかけで人って誰かを好きになるんじゃないのか。



