システム開発部に戻ると、三浦さんが私を見つけて手招きした。
「最近、ちゃんとチェックしてあげれてなくてごめんなさいね」
「いいえ」
「この間は恥ずかしいところ見られちゃったし」
「いえいえ。三浦さんでも支離滅裂になることがあるんだと思ったら安心しました」
「まあ私だってサイボーグなわけじゃないのよ。それより、あなたは永屋くんと付き合ってるのかしら？ おめでとう」
「ふぁっ」
いきなり何を言い出すの。変な声が出ちゃったじゃないか。
「な、なんで」
「だって朝からウザいくらいに、永屋くんが自分のものだオーラ出しているじゃないの。おかげで、システム開発部全体の士気が下がって困っているわよ」
「ああ」
思わずあたりを見回してしまう。
永屋さんは人気者だもんなぁ。それがこんな地味眼鏡と付き合うなんて知ったら、確かにみんなテンションが下がることだろう。申し訳ない。
「でね。今度永屋くんの家に行きたいんだけどいいかしら。一応あなたの許可もとっておいたほうがいいかと思って」
「へ？ 私の許可って」
「彼女でしょ？ 家に行くのに内緒にしてたら誤解の元じゃない」
「ああ、そういうことですか」
さすが気配りの三浦さん。
「梶さんと行きたいの。都合がつくのが今度の金曜らしいから、その日限定で。永屋くんには私からも言っておくけど、あなたからもお願いしてみてくれない？」
詳しいことを聞きそびれたけれど、やんごとなき事情でもあるんだろうし、そうお願いされたら大人としてはまあ了承するところでしょ？
私はそう思ったから、軽く引き受けたけれど、実際永屋さんに話したらすごく渋い顔をされた。
「わがまま言わないで下さいよ」
「その日はデートするって言っただろ」
「私も行きますから」
それでようやく納得してもらった。
たまに子供みたいにすねる彼。困るといえば困るんだけど、こういうわがままは嬉しいもんなんだなぁなんて思った。
