「その田中くんってどんな人? 葉菜を任せられるようなやつなのか?」
沈黙の後、梶さんがいう。
いや、私の口からは何とも。
強いて言えばお調子者で空気は自ら作るから読まなくてもいいって言っちゃうような人ですけど。
「冗談じゃないわ。あんな奴に任せてたら何もうまくいかないわよ。ちゃんと計画も立てずに仕事とってきては安請け合いばっかりして」
思いっきり批判しだしたのは三浦さん本人だ。
しかも実感こもってるし。ほんとに好きなの?
「……でも私は、田中くんを助けることができるわ。私は守られたいわけじゃないのよ。どんな時でも、私を必要だと言ってほしいだけ」
それはとても実感がこもっていた。
面倒をかけられても、三浦さんは必要とされたかったんだ。
だからと言って、田中さん……。
私的には絶対ないな。
でも田中さんだからこそ、逆に三浦さんが本気なんだなとは思える。
「俺だって葉菜が必要だ」
「あなたには、私は必要ないわ。……なかったでしょう? それを証明しちゃったじゃないの、あなたは」
離れていた期間を経て、栄転という形で戻ってきた彼。
それを、三浦さんはそういう風に受け取るんだ。
「田中くんとの未来だって考えられない。でも今、あなたより気になっているのは確かよ」
三浦さんははっきりそう言うと、グラスのビールを飲みほした。
梶さんは悲しそうにその姿を見ている。



