コミュ障なんです!


「とにかく、あなたとはもう終わったのよ。あなたが転勤するって言ったとき、私はついていく選択肢は考えられなかった。遠距離だって一年ももたなかったじゃないの。もしヨリを戻したとしても、また転勤となれば同じことの繰り返しよ」

「しばらくは日本にいられる。望めばずっと」

「嘘つかないでよ。あなたの仕事で、ずっと日本にいられるわけないわ。そのたびに傷つくのなんてごめんよ。私をいくつだと思ってるの」


三浦さんの声が涙ぐんで、一瞬梶さんも躊躇する。
なだめるようにやさしい声で名前を呼んだ。


「葉菜」

「私だって結婚とかいろいろ考えているの。本心を言えばあなたのことは嫌いじゃないわ。でも一緒に生きていくのは無理でしょう。あなたは私がいなくても、一人でやっていけるじゃないの」


三浦さんの目から涙が零れ落ちた。テーブルの上に落ちたそれを見ていると、こっちまで切なくなる。


「……そして私も、あなたがいなくても一人でやれたんだもの」

「俺は、平気なわけじゃなかった」

「私は平気だったわ。……いつのまにか平気になってた。放っておいても自分で何とかするあなたより、面倒をかけられても近くにいてくれる人のほうに癒されてた」


それが好きな人? 
でも面倒をかける人って……あれ、渡辺部長じゃない?

永屋さんがふと思いついたように、ぼそりとつぶやく。


「……もしかして、三浦の好きなやつって、田中?」


三浦さんの頬が一気に赤く染まった。


え、まさか、嘘でしょう?
私の尊敬する三浦さんの好きな人が、よりによって田中さん?